連載記事1.シフトチェンジ


「KENGOというアーティストの作品を解釈した上で生い立ちや現在に至るまで、そして現在を読み手に可能な限りわかりやすい文章と表現で掘り下げて綴って欲しいです。」

その依頼文章を筆者(中田 享)に送ってくれたのは紛れもない本人であるKENGOだ。

私からの紹介は省いて、インタビュー連載ではKENGO本人とのやりとりを中心に皆さんにお届けしたい。

初回になるであろう今記事では2020年 世界的に大打撃を今も尚受けているコロナ渦でKENGO本人が受けた影響と、行った活動に関して、本人の気持ちを引き出すことにした。

中田: KENGOさん、よろしくお願いしますね。
KENGO:お世話になります。よろしくお願いします!

以下 筆者:中  KENGO:K

中: まずは2020年、コロナウイルスの影響から多くのアーティストが活動の場所を失い、活動資金もなく途方に暮れる事態になりました。KENGOさんは今年 YouTubeでの動画配信を積極的に行っていますよね。ライブ活動も途絶え自粛期間を余儀なくされた、そんな中感じてきたことをお聞かせ下さい。

K: まずYouTube発信に至るまでのことをお話ししてもいいですか?

中: 勿論です。

K: 2019年の末に菅田将暉さんの「まちがいさがし」という曲のカバー動画を出して、そこから(2020年はYouTubeで動画を最低10本出します!)と年末年始のライブで公言していました。
それまではCDを出したりライブはしていてもYouTubeに自分から手を付けようとは到底思わなくて、2019年の春にオリジナル曲のPVを出したものの個人的には時間が経つ程、納得いかないものに変わっていってしまって火もくすぶってしまっていたんです。
作品に対して不満があるとか、そういう訳ではなくて。純粋に当時の自分には力不足だと自信をなくしていました。

中:ということは2019年春から年末のカバー動画発信までの間に何か変化があったということですか?

K: はい、3年連続で春にアルバム作品をリリースしているのですが、その直後に物凄い反動が来るんです。
気分的にも身体的にも疲れ切ってる中でCDを売っていかないといけない、売りたい、曲を聴いて欲しいという純粋な気持ちでライブ出演や路上ライブを毎週のように続けていましたが思うように売れなかったり、新しいファンが思うように付かなくて。メジャー、インディーズに関わらず目標や夢がある以上は大きな飛躍が出来ないことに只々不安になる時が誰にでもあると思います。

新しいことにも挑戦していかないといけないと内心日に日に強く感じていながらも挑戦する強さも余裕もなく。更に追い討ちをかけるように色んなことが押し寄せてきていました。

中: 歌っている時の表情や活動のプロフェッショナルな面からはあまり想像出来ないような葛藤があったということですね。
毎年1枚のアルバムをリリースし、ライブ活動も頻繁に行っていた。周りから見たら順調なアーティスト活動に見えるのは自然なことのように感じますが、ご自身の病気がそういった日々の葛藤や波にかなり大きい影響を与えているのでしょうか?

K: はい、それなしでは作品作りも出来ません。同時にそれがあるせいで作品作り含め あらゆることが思うように進まない時があるというのも事実です。

中: 今後その事についても詳しく掘り下げていっても大丈夫ですか?

K: 勿論、大丈夫です。

中: ありがとうございます。

2019年末から2020年のコロナ渦に至るまでにアルバム制作、ライブ、PV撮影を並行して行なっていましたね。
動画配信はファンへ やるぞ!と公言することであまり自信のない分野を敢えてやらざるを得ない課題にしたということでしょうか?

K: まさにその通りです。

それまでは自分の中には演出したい華やかな設定があっても、今の自分にはお金もないし機材もない。なにより、頑張って作ってもそんなに多くの人が見てくれるものではないと現実を見ていました。数字がついてこないこと、反響がないことがどれだけ自分のプライドを傷付けるかを予想して逃げていたんです。
アーティストとしてもプロとしても失格だったと後に反省しました。

中: いつもご自身と向き合いながら客観的にKENGOというアーティストをプロデュースという面でもしっかりと組み立てているのですね。
カバー動画は初めてのものにしては中々の反響を呼んでいたように思います。結果的に数字にも繋がっていると見受けました。
当時の勢いを受けて自信もついたのでしょうか?

K: 全くそれはないです。宣伝にお金をかけて、より多くの人に見てもらえる機会を作ったまでです。周りの人は喜んでくれましたが、僕としてはある程度は予想していたので、波に乗ったとか思うことはありませんでした。甘くないのは分かっていたので。
それでも自分で映像に関してのリクエストを事細かにして、アングルや自分の表情もちゃんとチェックするようにして、その場で出来る限りのことを自分の目線でも第三者の目線でも考え、こだわりました。その道のことは全く分かりませんが、分からないからこそ第三者目線で判断できることが多いのも事実で。音楽に関しても同じ方法で進んできましたから。

中: 確かに、その分野の知識を身につけて行くほど枠に囚われてしまうのはありがちなパターンといえますね。

K: 僕は直感や感覚、経験でしか動けないタイプなんですが、割と自分のやりたいことはくっきりと頭の中にあって、それを今の自分はどう表現出来るかを模索して、工夫して提案する事が可能だと気付いたんです。どうしても予算の関係で出来ない事も沢山ありますが。

中: それこそKENGOさんの最大の魅力、武器とも言えるのではないでしょうか。経験で培われるものは大きいということですね。
今年の春からの公開スピードはどんどん早くなっていますね、コロナ渦の中 意外と早い段階でシフトチェンジが出来たということでしょうか?

K: そうですね。年明けまでに2020年は今までとは活動の割合がある程度変わるだろうと思っていました。2月の終わり頃にはライブはしばらく出来なくなるかもしれないと、そうなったらどうするべきかを考えてました。
既にプレスに出したアルバムも3月中旬にリリースしても売れる見通しもなく、諦めるほかありませんでした。
今年はPV作ろう!集中しよう。と完全に切り替えました。

中: 今回お話して下さったことがなければ動画配信に方向転換するという選択肢もなかったかもしれない。
そう考えると凄く良い流れを作って2020年を迎えていたと考えられますね。
カバーの選曲はご自身で?

K: 基本的にはそうですね。スポンサーの方からのリクエスト以外は自分が歌いたい曲、挑戦したいと思う曲を中心にカバーしています。

中: そこにも何かこだわりが?

K: ライブの時もそうなんですがカバー曲は自分が特別な思い入れのある曲や、共感できるものを歌うようにしています。そういう気持ちにならないと作るのも勿体ないというか。
自分の悪いところなんですが、あまり流行ってる曲を多く取り入れられないという弱点でもあって。バック音源の制作も依頼して作ってもらっているので、歌を覚えて歌入れまで、そして完成までが楽しみになるものじゃないと続けられる自信がなくなってしまうんです。

中: リリース時期も名曲ながら前のものが多い印象がありますが、今年リリースの曲も織り混ぜている点はリスナーを意識していると感じました。

K: カバー歌わずオリジナルで勝負しろっていう人いるじゃないですか。言葉悪くなってしまいますが、うるせえよ(笑)と思ってしまうんです。
世の中には有名なカバー曲を歌う事で新しいリスナーを獲得したいアーティストが沢山います。そこからオリジナル曲を聴いて欲しかったり、自分に興味を持ってもらいたいんです。いきなり知らないアーティストのオリジナル曲を歌うより、みんなが知っている曲を歌う方が良くも悪くも比較出来て、その人の良さに気付けるなんてこともあるんです。

中: 確かに。カバー曲で惹きつけられたなら、そこから更にオリジナル曲に惹きつける。アーティスト自身に惹きつけるというのが狙いなんですね。

K: その通りです。YouTubeの場合はカバー曲で収益がある場合にはちゃんと本家の方にも分配されるシステムが導入されています。僕の出している動画でもほとんどが収益分配になっています。それって凄く素敵なことだと思うんです。自分の好きな曲を歌って少しでもご本人に利益があるなら、頑張ろうとも思えます。

中: かなり原曲に忠実にカバーされている印象を受けますが、普段から意識して?

K: できる限りの敬意を込めて毎回カバーしています。それが第三者には受け入れられない場合もありますし、こんなんじゃないと否定されることもあります。時間が経って、もっとこう出来たなーって事もあります。
本当はアレンジして歌うのが好きなんです。だから、原曲に忠実に歌うことは凄く難しかったです。

中: 曲を聴いてる限り、意外な答えですね。

K: 海外のオーディション番組だと原曲を自分なりに吸収してどれだけ自然にアレンジして聴かせられるかというのが見所でもあるんですが、どちらかといえばそういうのばかり観ていたのもあって原曲の音符通りに歌う方がアレンジするよりも難しいと感じてしまうんです。
日本のカラオケ番組とかで100点目指して歌って競ってる方とか純粋に凄いなと思います。本当に美しく歌われてるんですよね。
海外で採点機能をメインにしたカラオケ番組も最近は出てきてますが、なんか違うなって感じで全然面白くなかったんです。システムが日本の番組とは違って難しい印象もありましたが、うーんって感じでした。個人的にはです。

中: 100点を取りたくて練習してる人と自由に歌いたくて練習してる人の違いは確かにはっきりと分かれますね。

K: 僕としては両方出来るのが理想ですけど、人それぞれですから。
カバー動画に関しては出来る限り崩さない努力はしてます。でもこうしたいなぁっていうのは色々出てくるので少しだけアレンジしたり、加えたりする時もあります。
中: 今年も残るところ僅かですが、カバー曲は現在も制作中ですか?

K: 勿論です!レコーディングがとにかく難しくて苦労しますが、早く公開したいです。

中: 楽しみにしていますね。

次回は新しく公開されるというオリジナル曲「Unfair」のMVの話題を中心に皆さんにお届けします。

追記
自信を度々失くすという言葉は意外であった。KENGOというアーティストを目の前にしたことはないながらも、充実したコンテンツ、写真や映像から垣間見える人柄の良さ、一見取っ付きにくそうな独特な雰囲気とは裏腹に考えや世界観を言葉にして伝えることの巧さや貪欲な面には驚かされた。

長いブログ連載におけるインタビュー。引き出すべきものはまだまだ多く筆者自身、質問が尽きない自信もあるのが本音である。
アーティストKENGOのありのままを届けるサポートが出来たらと思うのであった。
                                                   中田享

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